企業イメージ:オリックス八ヶ岳農園株式会社

野菜に付加価値
農業に新たな1ページを

オリックス八ヶ岳農園株式会社

富士見町の東部には八ヶ岳がそびえ、そのなだらかな裾野には田畑が広がる。遮るものがないこのエリアは、八ヶ岳はもちろん、入笠山、富士山や北アルプスまで見渡せる絶好のビューポイントでもある。そんな絶景ポイントの一画に「オリックス八ヶ岳農園」はある。大型農業用ハウスの中に足を踏み入れると、やわらかな日差しの中、一面の緑が目に飛び込んでくる。主に関東方面へと出荷される葉物野菜たちだ。このハウスの中には、オリックスが描く農業の未来が詰まっている。

 

金融、野球… 農業?

 2015年にオリックスが事業パートナーと連携し、野菜の生産拠点として設立したオリックス八ヶ岳農園。標高1,100mに位置する大型の温室の中ではサラダほうれん草、サラダルッコラ、サラダ春菊、サラダクレソンが水耕栽培され、主に関東方面のスーパーに向けて出荷されている。

八ヶ岳を望むオリックス八ヶ岳農園

金融サービスやプロ野球球団と多角的な経営を進めるオリックスだが、農業分野に進出した目的とは一体なんなのだろう。オリックス八ヶ岳農園の代表取締役社長・清川蔵人はこう話す。

「オリックスの農事業部が設立された当初の目的は、農業バリューチェーンの効率化です。日本の農業全体をみると、食糧自給率が低い、後継者が少ないなど、多くの課題を抱えています。課題が多いということは日本の農業はまだまだ伸びしろがある、チャレンジしがいがある分野だと考えました。私たちのような民間企業が参入することでより盛り上げていくことができればと思うのです」

農業バリューチェーン、流通を改革するための農事業だったが、参入するからにはまず生産について知ることが急務。そこでオリックスは、オリックス八ヶ岳農園のほか、やぶファーム(兵庫県養父市)、オリックス農業(兵庫県養父市)、という3つの会社と農園をほぼ同時期に設立、野菜の栽培から着手したのだ。

オリックスが農業に進出した経緯を熱く語る代表取締役社長 清川蔵人

天候と立地、そして安全性に支えられるおいしさ

オリックスは、運営する3つの農場で水耕栽培を採用している。採用したポイントはいくつかある。天候に左右されにくく、栽培期間を短縮できるため年間を通じて安定した生産が可能なことや、病害や虫害の心配が少ないため、栽培期間中、無農薬で栽培ができ、安全性を担保しやすいこと、土寄せや除草など、土耕にかかる作業を省くことで大規模な運営がしやすいことなどがあげられる。

温室内に出入りする人は都度靴底を消毒し、白衣を着用する。人から持ち込まれる菌が野菜を傷めてしまう原因となるため、徹底した衛生管理が必須なのだ。

ハウスの中はいくつかのブロックに区切られていて、品種や育成具合によって調整された養液がその中を循環している。養液はこのブロックの中を循環するが、他のブロックの養液とは混ざらない仕組みになっていて、万が一病気が発生しても被害を最小限にとどめられ、日常的にも管理がしやすく安全が保たれやすい。

温室内へは白衣の着用や消毒。社員の衛生管理、体調管理にも気を配る

八ヶ岳の日差しと水にはぐくまれる野菜

環境に左右されにくい栽培方法ではあるが、なぜ富士見町を選んだのだろうか。清川は第一に気象的条件を挙げた。

「一年を通して日照量が多いことは大きなメリットですね。冬の寒さは厳しいですが比較的降雪量が少なく、雪に閉ざされてしまうようなことはありません。夏場のハウス内が暑くなる季節には、八ヶ岳の伏流水を組み上げ、栽培溶液を冷やすために利用しています」

次に清川が挙げたのは、東京へのアクセスのよさだ。葉物野菜は日持ちがしないため、収穫してから消費地に届くまでのアクセスは重要だ。

「サラダほうれん草」「サラダ春菊」などの商品。
露地栽培と同じ品種だが水耕栽培で育てることで、苦味やアクが抑えられ生食できる

富士見町に農場を構えて、良かったことはあっても、悪かったことは思いつかない、と清川は話す。

雇用の面でも同じだという。農地があり気象的条件が揃ったとしても、人手が確保できないと事業として成り立たない。その点、オリックス八ヶ岳農園では、季節によって多少のばらつきがあるが、常時50名前後の人が働いている。そのほとんどは富士見町を中心とした周辺地域から採用され、年齢も幅広い。

雇用は富士見町内を始め、近隣市町村から積極的に採用

顧客との近さが新しい農業を生む

小規模農業が主な日本。民間企業が参入していくことはどんな意味があるのだろうか。

「我々の強みは、マーケットの声をダイレクトに聞けることだと思っています。オリックスは幅広いネットワークを持っていて、全国にお客様がいます。全国の支店の営業ネットワークを通してさまざまな声を聞けることが強みです」

近年栽培を開始した「スイスチャード」という野菜がある。スイスチャードは見た目がほうれん草に似た葉物野菜で、茎が赤、黄、白などカラフルなのが特徴。サラダはもちろん炒め物などにも活用でき、食卓に彩りを添えてくれる。このスイスチャードの栽培は、もともと取引のあった顧客の要望、そして対話から栽培が実現した。独自のネットワークと構築された信頼関係から新しい農業の形、まさに農業バリューチェーンを築きあげている一例だ。

顧客との対話から生産が実現したスイスチャード。彩りが美しく、量産されることの少ない野菜で付加価値が高い

今後もその動きを止めないためには、変化していく市場のニーズを一層追求していく必要がある。全国にネットワークがある強みは前述の通りだが、さらにその営業力を生かすために、オリックス八ヶ岳農園で生産している野菜の魅力を伝える工夫もしている。

その一つに、レシピの提供がある。オリックス八ヶ岳農園で働くスタッフの中には主婦が多いため、普段どのように調理しているのかアイデアを募集してみたところ、驚くほどたくさんのレシピが集まった。さっと洗うだけで食べられる特徴を生かした時短料理から、おもてなし料理にもぴったりな一手間加えたレシピまでバラエティ豊かだ。これらのアイデアをレシピ化し、営業ツールに加えていこうと計画したものだ。

「食」に携わるものの責任の重さ

一般的な農業における課題は、労働条件の過酷さが挙げられるだろう。特に農繁期には労働時間管理や休暇は二の次とされることが多い。

オリックス八ヶ岳農園では夏場の農繁期も含め、繁忙期に毎週日曜日は休日となる週休1日体制を整えている。天候に左右されやすい露地栽培や繁忙期の人手が足りなくなる小規模農家ではなかなか実現し得ないことだ。

2020年には、農業、そして食に携わるものとしての責任を一層強くする出来事が起きた。

「2020年は新型コロナウイルスにより、日本中、世界中で大変な混乱が生じ、思いもかけない業種が停滞したり休業などを余儀なくされました。オリックス八ヶ岳農園では、主にスーパーを通して家庭の食卓に並ぶ野菜を生産していますので、幸い、需要が途切れることはありませんでした。大変ありがたいことだと思うと同時に、改めて『食』に携わる社会的責任を感じました。これから先、安心安全な野菜の供給を念頭に、野菜、農業の可能性を追求していきたいと思っています」

農産業全体が抱える課題は山積みだ。

野菜の可能性、農業に関わる人たちの職場環境、消費者に安定的に届ける食の供給。標高1,100mに位置する富士見町で、オリックス八ヶ岳農園の挑戦は続いていく。

取材・執筆:田中ゆきこ(尽日舎)
構成・編集・動画:澤井理恵(ヤツメディア)
写真:高橋博正(山の上スタジオ)

オリックス八ヶ岳農園株式会社

【設立】2015年 

【所在地】〒399-0214 長野県諏訪郡富士見町立沢1312

【代表者】代表取締役社長 清川蔵人

【従業員数】53名

【事業内容】水耕栽培による各種葉物野菜の生産・販売

サラダほうれん草、サラダ春菊、サラダルッコラ、サラダクレソン、スイスチャード

 

(記載の内容は全て取材時点の情報です)

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