企業イメージ:カゴメ野菜生活ファーム株式会社

野菜とともに
にぎわいを育む

カゴメ野菜生活ファーム株式会社

2019年4月、富士見町に誕生した「カゴメ野菜生活ファーム富士見」。"体験型 野菜のテーマパーク"と銘打つこの場所は、1968年に操業を開始したカゴメ富士見工場を間近に望む立地にある。周囲の遊休農地を活用しながら、親会社であるカゴメ株式会社の哲学である、土からのもの作りをしていることをあらわす「畑は第一の工場」を体現・体感できる場として、多様な企画を展開。オープンから5年、活動範囲は施設内にとどまらず、富士見町内の施設や学校にも広がりをみせている。

半世紀前から続く、富士見町との縁をかたちに

中央自動車道諏訪南I.Cから車で約7分。カゴメ野菜生活ファーム富士見(以下、野菜生活ファーム)は富士見駅からも程近く、山と田畑に抱かれた大平地区に2019年にオープンした「体験型 野菜のテーマパーク」だ。

地元食材やカゴメ株式会社(以下、カゴメ)特製の「野菜だし」を使用したイタリアンレストランと、オリジナルグッズが並ぶショップのある「ファームハウス」を中心施設とし、すぐ隣には旬の野菜の収穫ができる「アグリパーク」、1粒の種から成長し1万個の実をつける姿が圧巻の「トマトの樹」も見られる観光用の温室など、独自の視点で組み立てられたコンテンツが充実している。コロナ禍で集客の減少には見舞われたものの、3万人以上の来場者が訪れる、町の人気スポットの一つとなっている。

1粒の種から育てた、天井いっぱいに広がる「トマトの樹」が見られる観光温室
野菜生活ファーム内レストラン「IL FAGGIO(イルファッジオ)」。シェフこだわりの薪窯(写真)で焼いたピザのほか、旬の野菜を使ったアラカルトメニューも豊富

「当施設オープンの背景には、まず第一に工場を操業させていただいている地元富士見町への感謝の想いがあります」と話すのは、施設運営のために設立されたカゴメの関連会社であるカゴメ野菜ファーム株式会社にて代表取締役を務める川口詞正だ。

2023年10月、カゴメ野菜ファーム株式会社代表取締役に就任した川口詞正

「首都圏へのアクセスの良さ、そして入笠山をはじめとする南アルプスからの豊かな地下水の恵みが決め手となって、カゴメが富士見町に工場を建設して50余年。私たちを受け入れてくださった地域への感謝の気持ちを込め、私たちらしいかたちで『地域のにぎわいの場』を作ってご恩返しができれば、というのが、野菜生活ファームの誕生前からあった発想でした」

同社が施設建設よりも先に着手したのは、地域の課題であった遊休農地の解消だった。「工場のご縁でつながった富士見町を、さらににぎわいあふれる地域に」との考えから、「工業・農業・観光が一体となったテーマパークをつくろう」との構想が生まれたのだった。地元人材を社長に登用し、2015年農業法人「株式会社八ヶ岳みらい菜園(以下、みらい菜園)」を共同出資で設立。まずは工場のある大平地区の遊休農地でカゴメ独自の品種である高リコピントマトの施設栽培を開始した。

「八ヶ岳みらい菜園」農場。遊休農地を解消するだけでなく、栽培施設の暖房源には隣接するカゴメ富士見工場の排温水が利用されたり、工場から排出されるCO2もハウス内で光合成促進に活用されたりと、循環型農業の実践の場ともなっている

来場者に導かれ、柔軟に変化を重ねて

「富士見町に、工業・農業・観光が一体となった野菜のテーマパークを」。そんな構想で設立された「野菜生活ファーム」は、カゴメのものづくりの理念や、“野菜のおいしさ、楽しさ”を、この場所全体から体感できるような構成が特徴です」と川口。そしてこの構成は、来場者のレスポンスを反映しながら柔軟に改善を続けてきた。

「最初の年にこの場所のメインコンテンツと捉えていたのは富士見工場の工場見学でしたが、工場見学は安全管理の面からも予約制であることから、見学の目的でご来場される以外の方には施設そのものにも立ち寄りづらくなってしまう、ということがわかってきました。もう一つのコンテンツである野菜の収穫も、当初現在ほど種類は多くなく、沢山のお客様に楽しんで頂けるよう改善が必要でした。」

収穫体験のようす。赤い帽子が目印のスタッフが食べごろや収穫の仕方を伝え、体験の深まりをサポートする

そうした思いの中迎えた開業2年目は、コロナ禍に直面し、さまざまな行動制限の中で、お客様の安全を第一に運営するために、従業員の皆と知恵をしぼり、様々なことに取り組んだ。収穫体験では、トマトに加え、とうもろこし、なす、かぶ、さつまいもなど野菜のバリエーションを徐々に増やしていくことで過密を避け、人と人とが接触しづらい環境に改善した。その結果、季節ごとに旬の野菜の収穫を楽しんで頂ける“野菜のショールーム”のような畑になり、今では年間に40種類以上の野菜を栽培している。

「また、コロナの影響で工場見学を休止することになり、工場に行かなくてもカゴメのモノづくりの理念を伝えるにはどうしたらよいかを考えた結果、バーチャル見学としてタブレットのVRを活用したところ、予想以上のご好評をいただきました。

迫力は実際に見たほうが伝わるけれど、ジュースのストローの付け方や真空にする方法などはVRの方がわかりやすいなど、バーチャルのほうがより伝わることもある。コロナがもたらしてくれた“気づき”でした」

カゴメファクトリーツアー

また、2022年に内容を刷新した「カゴメファクトリーツアー」では、VRからさらに進んで工場の空間にデジタルコンテンツを重ねるAR(拡張現実)の技術を導入した。

「リニューアルした工場見学のテーマは、『カゴメの人』。契約農家さんの畑に足を運ぶフィールドマンから工場内の従業員、店頭に商品を届ける営業担当者まで、カゴメ従業員の代表14名がデジタルで登場し、それぞれの言葉で「野菜を届けたい」という想いを語ります。『もっと見たかった』『こんなふうに丁寧に作られていると知りませんでした』など、共感の声を非常に多くいただき、安堵しているところです」

地域に愛され続ける施設を目指して

こうして、コロナ禍を乗り越えながら地域ににぎわいをもたらす施設づくりのための改善を重ねてきた野菜生活ファーム。最後にもう一つ、富士見町の人々との交流を深め続けてきたことも付け加えたい。

たとえば野菜生活ファームでは、営業を開始した2019年から毎年6月に、地域住民や地元の小学校3年生と一緒に、遊休農地だった田んぼにひまわりの種をまく活動を続けている。ひまわりは景観が美しいだけでなく、深く根を張る性質によって土壌を改良し、畑に活用するための手助けをしてくれる役割をもつ。また、最終的に畑に漉き込むことで、肥沃な土づくりにもつながる。ひまわり栽培を通じて、富士見町の景観づくりと遊休農地再生の取り組みを地元小学生とともに行ってきた、というわけだ。

「2022年には、栽培したひまわりの種を搾油し、オリジナルラベルのひまわり油を商品化して、限定40本で販売しました。2023年は富士見町ある3つの小学校すべての3年生が参加してくれたんです。オリジナルソング『たいようの花』という歌もでき、子どもたちがひまわり畑で歌う様子はじつに感動的でした」(川口)

地域に根ざした工場操業を続けながら、カゴメが掲げる「畑は第一の工場」を文字通り実践する場となった富士見町。だからこそ「私たちにとって野菜生活ファームは、地域の方たちに自慢していただける、誇りに思ってもらえる場となることが大前提」だと川口は強調する。

「インバウンドももちろん大切ですが、まずは近くの富士見町民のみなさまに愛される場所であるように。そのうえで、地域外の方にも野菜生活ファームがある富士見町に行ってみたい、住んでみたい、働いてみたいと思っていただけることで、町の関係人口の増加につながればと願っています」

カゴメ野菜生活ファーム株式会社

【設立】2018年

【住所】〒399-0211  長野県諏訪郡富士見町富士見9275番地1

【連絡先】0266-78-3935

【代表者】代表取締役社長 川口 詞正

https://www.kagome.co.jp/ysfarm/

(記載の内容は全て取材時点の情報です)