企業イメージ:武蔵野通工株式会社

電気も人も、
技術でつなぐ。

武蔵野通工株式会社

1879年、世界に新たな文明の光=白熱電灯を灯したのは言わずと知れたエジソンだが、この発明に続き、電力の安定利用に大きく貢献した二人の発明家・ゴラールとギブスを知る人は少ない。二人が「変圧器(トランス)」を生み出したことで、発電所からの電気は安全、かつ無駄のない利用が可能となったのだ。変圧器は、電気を取り巻くあらゆる機器・装置に欠かすことのできないもの。ニーズは普遍、マーケットも国内外を問わない。このことを、武蔵野通工創業者・野口耕一は、はっきりと見通していたのだろう。自社の強みとしてきた「手巻きカスタムトランス」の生産力向上を叶える「パートナー」を求めて、単身中国へ。そこから約30年かけて育んできた関係性と技術力は実りのときを迎えている。

生産拠点を求めて富士見へ、そして中国・天津へ。

通信用小型トランスから大型三相変圧器、電源ユニット等を手がける変圧器メーカー・武蔵野通工株式会社。1960年、創業者野口耕一は大手電気メーカーの通信分野の工場に勤めていた経験を生かし、若干26歳で東京都杉並区にて独立。東京の小さな町工場として、変圧器の製造・販売事業を開始した。

「当時の音響設備のトップメーカーで、現在も『SANSUI』のブランドで知られる『山水電気株式会社』との製造および技術提携が、創業後まず獲得した大きな仕事だったようです。すぐに工場が手狭になり、郷里であったここ富士見町に拠点を移すことになったと聞いています」

そう話すのは現在、代表取締役社長を務める息子の野口玲(あきら/以下、野口)。「人と違うことしかやらない」圧倒的な行動力の持ち主だったという父・耕一は、手巻きでつくりあげるカスタムトランスにこだわり、1963年、富士見町での工場建設と同時に周辺地域で素早く内職のネットワークを構築。一時は富士見町の蔦木から甲斐市敷島までの一円に500軒の内職職人を抱えた時代もあったという。

代表取締役社長 野口玲

加えて驚かされるのが、中国進出の先進性だ。耕一は1980年代半ばに単身渡航。中国・天津にてさらなる生産力拡大のためのパートナー企業との出合いを求めた。そして1994年、独資で設立したのが「天津武蔵野電子」。耕一は中国の人々との関係性構築に心を砕き、まず日本の風習を伝えることから始めていった。

天津武蔵野電子有限公司

「毎年、2名ずつぐらい日本に現地の社員を連れてきて、うちで共同生活を送りながら工場で働いてもらっていたんです。日本流の掃除の仕方や道具の置き方、扱い方を肌で感じてもらうのが目的だったようです」

軌道に乗るまでには「5年以上の歳月を要した」というが、今や同社にとって中国工場は「家族のような存在」と野口。技術を伝え、生産を求めるだけではない関係性を着実に育んできたのだ。

「最近、30年前からずっと働いてくれている中国工場の社員に孫が生まれた、なんていう話を聞くんです。これまでの交流の年月を思うと、感じ入るものがあります。最近は、設計も改良も、中国側からアドバイスをもらうことが多くなってきましたよ。市場の成長も含めて、これからは中国での受注が主力になっていくかもしれないと感じるほど。生前、父が話していた通りの道筋になっている気がします」

中国工場は現在も完全子会社ながら、独自の生産・販売も行う独立採算制。もはや日本から社員派遣は行わず、自立した経営を実現している。

中国工場/天津武蔵野電子有限公司(写真:天津武蔵野電子有限公司 提供)
家族同然の関係性を育んできた中国工場の従業員たち(写真:天津武蔵野電子有限公司 提供)

高い基準、繊細な要望に応える。圧倒的な技術と人材育成

あらゆる電気製品に欠かせない部品だけに、単純な構造のトランスは生産そのものが機械化されていることも多い。しかし同社の強みは、温度上昇や電圧変動率を重視しながら小型化のニーズに応える「フルカスタムトランス」だ。すべて手巻き、はんだ付けも手作業。一つの不良が人の命に関わる医療機器や防災用警報機のトランスも数多く手がけてるその実績からも、同社の技術の高さがうかがえる。

こうしたなかで開発された「NCWトランス」は、新開発のコイルボビンにノンカットの鉄心を巻き込んだ、新発想のトランス。コイルボビンと鉄心巻込装置を開発することで巻線・絶縁処理・鉄心巻込作業等の効率化と品質の安定化、製造コストの飛躍的な低減を実現した。

「省資源・省エネルギーといった時代の要請に応える、当社の自信作といえるオリジナルトランスです。分割式の専用ボビンは海外の安全規格もクリアすることが可能で、漏洩磁束も少ない小型で軽量な新規格。医療機器をはじめ工作機器など、多くのユーザー様に採用いただいています」

主力製品は防災用受信機から血液分析装置、レントゲン、 CT、MRIなど。
小型基盤実装品から大型の産業用リアクトルまで手がけ、製品はいずれも難易度の高いものばかり
(写真:武蔵野通工 提供)

こうした開発も含めた生産を可能にする繊細なコイル巻きの技術を習得するために要する時間は、少なくとも3年。それまでに離職してしまえば投資は無に帰すわけだが、それでも同社では積極的に新人を雇用し続け、次世代を担う技術の育成を行っている。

「どのような機械に用いるかによって、電圧も違えば規格も異なる。さらに省エネ、コンパクト、低ノイズなど、求められる要求も年々高くなっています。技術の習得は簡単ではありませんが、定着率は約70%、高い方だと思います。人材育成の秘訣……と言われると難しいですが、ワーカーからマネージャーになるまで4つのステップを設けて実技試験を行っています。そのうえで、中国との関係作りと同様に、人に寄り添うことが基本かもしれません」

現在、中国も含めたグループ全体で従業員は160名。この厚い人材の層が、徹底した「手しごと主義」での少量多品目生産を実現し、現在常時60社以上の取引先に対し1ヵ月に300〜500種類、7〜8万個の安定納入を支えている。

「受注する製品はサイズも多様。老若男女問わず活躍の場がある」と野口
整理整頓された富士見工場内の様子

高度化するテクノロジーを支える、手しごとの技を、未来へ

2020年には創業60年が経過。この長い歴史の中で、日本と中国の経済状況も含めてビジネス環境は激動と言えるほどの変化を遂げてきた。それでも、同社への引き合いは弱まるどころか、ますます「手しごとでのカスタム品受注」というその強みが時代に求められているようだ。

製造業の機械化、オートメーション化が進むなか、愚直なまでに育んできた手しごとの技術。それこそが同社のゆるぎないオリジナリティであり、高度化するテクノロジーに対応するソリューションとして今、求められている。

本社工場にはインダクタンスを調整する、独自のフェライトコア自動研削装置も

「実は、当社の製品の約半数は欧米や中国に向けたもの。規格も厳しい海外向けのほうが、トランスの設計や製造方法にも高い技術力を要するんです。多くのトランス生産の発注が海外に流れたこともあり、もう日本では製造されなくなってしまったトランス関連のパーツも増えてきたのですが、私たちなら中国工場との連携により、材料調達や部品製造も可能です。今こそ、私たちが培っていた人と技術を、多くの皆様にご活用いただければと思います」

取材・執筆:玉木美企子
構成・編集:澤井理恵(ヤツメディア)
写真:高橋博正(山の上スタジオ)
動画:山田智大(やまかめ)

武蔵野通工株式会社

【設立】1960年

【住所】本社工場 〒399-0102 長野県諏訪郡富士見町落合3651-3

【連絡先】TEL:0266-64-2241 FAX:0266-65-3021

【代表者】代表取締役社長 野口 玲

【従業員数】本社工場20名 中国工場140名

【事業内容】電源トランス等の各種トランス、リアクトル及び電源ユニットの設計、製造、販売

【主要取引先】株式会社荏原製作所、能美防災株式会社、浜松ホトニクス株式会社、富士電機株式会社、株式会社明電舎 (敬称略)他

【設備情報】高速電源変圧器用捲線器、スイッチングトランス用捲線器、極細線用自動捲線器、大型変圧器用捲線器(自社製)、電源トランス総合試験器、スイッチングトランス総合試験器、インパルスチェッカー、LCRメーター(YHP 4284A)、DCバイアス試験機(YHP 42841A)、雷サージ試験器、フェライトコア自動研削装置

【webサイト】http://www.n-musashino.co.jp/

 

(記載の内容は全て取材時点の情報です)

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