企業イメージ:株式会社明工精機

国内屈指の大型設備と
人財で1μの戦い

株式会社明工精機

「こちらの工場に置くのですか?」。さまざまな思いを込めて新設した明工精機の工場には機械メーカーの担当者が驚いたという高額・高性能な2種類の機械が鎮座する。くだんの担当者が「大手メーカーにしか納品したことがない」と語るほどの設備をフル稼働させているのは、自動車部品などの順送金型をプレス機械に固定するダイセット、金型を構成する重要な部品モールドベースなどの加工だ。しかも1メートル近いサイズで誤差が1μ(ミクロン=1000分の1ミリ)あるかないかという高精度ぶり。国内でもトップクラスの加工技術、品質管理を実現する株式会社明工精機の存在は、富士見の誇りでもある。

若いころに培った技術とノウハウ
国内トップクラスを目指す

明工精機は2009年に創業した。代表取締役社長・北原収は高校卒業後、いとこが諏訪市で経営していた、産業機械の部品製造、樹脂成形型やアルミダイキャスト型の特注ダイセット加工を2本柱とする会社に勤務。独立にあたり後者、順送金型をプレス機械に固定するダイセット、金型を構成する重要な部品モールドベースなどの製造を選んだ。 北原はインタビューの中で、「私も作業者の一人であって、お客様に良いものを少しでも早く、安く届けるという思いをずっと持っています。機械を使って穴を開けたり削ったりしかできないから、とにかく身体を動かさないと」と何度も繰り返した。

当たり前に聞こえる言葉だが、話を伺っているうちに、その説得力が高まってきた。

代表取締役社長 北原収

創業はリーマンショック直後。時期が時期だけに銀行にも呆れられたという船出。最初の半年は、機械も買えないまま営業をして回ったという北原が当時を振り返る。 

「いとこの会社では新しい機械、新しい技術はひと通り体験させてもらってました。独立を考えたときは産業用の装置部品にするか金型にするか悩みました。多くの企業が海外へ工場を移し、コストが安くなければ受注できない状況でしたから。それでも、樹脂・プレス金型ならまだまだ高精度なものづくりで勝負できるはずだと考えたんです。最初は安価で受注をうけていましたが、徐々に品質精度が認められ、価格での勝負ではなく、高精度な製品を求めるお客様から声をかけていただくようになりました」

現場で腕を振るう北原

北原は若いころ、朝から深夜まで毎日休みなく、同世代の2倍も3倍も働いたことで培った技術への自信があった。設立当初、自動車のスイッチ類などの内装部品の金型が中心だったため30〜40センチ四方の金型が多かったが取引先からの紹介、そのまた紹介とい う具合に評判が伝わり、やがて営業をしなくても仕事の依頼が次々と舞い込んでくるようになった。当時、わずか3名の信頼できる社員と連日深夜2時、3時まで作業という日々が続いた。

「こちらから仕事をくださいとお願いすれば、当然、他所より安くしてくれれば、となりますよね。でもウチは創業当初だけしか営業はしなかったんです。こちらから安売りすることはないし、そもそもウチしかできないことであれば、他社と比較した製品単価はないのと同じです。製品に見合った価格をこちらで決めて勝負していました」

2011年、タイの大洪水(チャオプラヤー川一帯で起きた大洪水。被害総額は日本円にして4000億円前後と想定される)で被害にあった国内企業のヘルプ工場として声がかかり、1週間で7型を納品という難題がまいこむ。仲間と「1週間も徹夜すればいけるね」と確認した上でこなしていった。こうしてリーマンショックの荒波を乗り終えることができた。当時の取引先との関係は今も続いている。

「うちはお客様に恵まれているんです」と日焼けした北原から笑顔がこぼれた。

巨大メーカーが所有する工作機械
平面研削盤導入の決断

明工精機では、2015年に20、30年後のものづくりを見据えた新社屋を建設した。きっかけは、巨大メーカーが所有するような大きな機械を導入したことだった。

「実はその工作機械が最初の工場に入らなくて。別の場所に工場を借りて2カ所を行き来していましたが、家賃を考えたら新築しても変わらなかったんです。それに、ご先祖様から受け継いだ田畑を守ってきた先達たちが高齢化で農業ができなくなって。若い者が引き継いでうまく活用してもらいたいと言われたんです」

生まれ育った富士見への愛、そして地域への強い思いが伝わってくる。

工場の裏手には、豊富な水で田んぼをつくってきた往時の名残としての水場が設けられている

まず2018年に導入したのが安田工業のCNCジグボーラーYBM1224V。機械メーカーが自社製品となる機械を製造するマザーマシンで、材料の位置決めから加工、繰り返しなど、オールマイティに高精度を維持できる。

「オークマ10面パレット横型マシニングセンタの導入後、それまでは月に30〜40型しかつくれなかった金型が、60〜70型と倍増できたのは大きかったですね。売り上げ? それよりも設備の支払いができればそれでいいんですよ」

ヤスダジグボーラーよって電気自動車のモーター、水素自動車の部品など、最先端かつよりサイズの大きな金型にも仕事が広がった。社員数も3倍の15人になったという。

安田工業のジグボーラーYBM1224V

2020年末には岡本工作機械製作所の超精密門型平面研削盤UPG-CHLiシリーズを導入する。それまで金型に使用するプレートの平面研削は県外の協力工場に出していたが、「こちらの要望は誤差5μの許容。しかし、その要望がなかなか厳しかったようです。それだったら自分の会社に平面研削盤を入れれば、安田の機械をさらに生かすことができる」。

導入の決断は早かった。

明工精機では年一回、独自にメーカーに依頼し設備点検を行っている

他所の会社から見たら大胆な設備投資。

北原は「私が現場にウエートを置いていますので、お客様がどんな製品を求めているかわかるんです。お客様が求めているもの、今後こういう方向へ進みたいと思っているものがわかる。そのためには、高額でも設備を導入するだけなんです。夢を見るような先行投資ではないし、投資をしたら仕事につながる。 新しいお客様とも出会える。得るものはとても大きいんですよ」と意に介さない。

思い切りのいい判断の背景には、安価より、高精度を求める取引先が増えていることにある。明工精機のポテンシャルを必要としている取引先と言い換えることもできるだろう。

「国内には、細かな部品で数μの誤差を実現できる加工屋さんは山ほどある。でも1 メートルを超える大きなもので数μの精度を出せるのは、国内数社のメーカーさんしかできないでしょう。それがウチではできるんです。いろいろな企業の方が見学にきても、田舎の中小企業に、単体でも珍しい機械が2種類もあるので非常に驚かれますよ。ウチが持っている設備は日本の中小企業ではトップクラスですから」

しかし設備の上にあぐらをかいていないところが、明工精機の凄さでもある。北原をはじめ腕利きの社員全員が担当する金型の品質に責任を持ち、取引先の現場のスタッフが手を切らないように返りバリをヤスリがけしたりなど、納品後すぐに作業できるような気遣いをしているのだ。

「仕事を発注する担当の方だと価格を下げることが先になりますが、ウチの場合は現場の組み立ての人たちが喜んでくださるんです。現場の方たちが『明工に出せ』と言ってくれる。寸法がしっかり出ているのはもちろん、作業が楽だからなんでしょうね。ありがたいです」

年間に大小何万点ものプレートを納品する中、多くて一つ不適合があるかどうかという仕事をしている明工精機。精度が出る設備の導入は、高い技術を持つ社員の負担を軽減させる意味もある。自社の社員や取引先への気遣いは、現場一筋で鳴らしてきた北原だからこその視点なのだ。

私たちの技術を必要としてくれる
お客様と出会いたい

国内のトップ水準を自負する会社が富士見町にあることは地域の誇りだと、話を聞きながら感じた。その名に「ものづくりの世界がこれからも明るいように」と思いを込めた明工精機の次の展開について、北原は「私たちが保有している設備を、私たちの存在を必要としてくれている国内のお客様に知っていただくこと」ときっぱり。次のステージに向けて、準備はすでにできている。

「分野としては電気自動車のモーター関係の金型かな。これまでは、こういう大きなものは精度が出なくて当たり前みたいな業界でした。だけど実際に製品をつくっているところにしたら、しっかり精度が出ている方がいいわけです。そこをつかんでいきたいです。ウチのなら大手のメーカーさんでも難しい、数量もこなすことができますから」

強固な地盤、そして
言葉に潜む「富士見のために」の思い

明工精機の高精度の仕事は、新築した建屋にも由来している。実は立沢地区は富士見町の中でも地盤が非常に固いのだ。予定していたショベルカーでは土がまったく掘れず、急きょ大型のものを投入したほど。土を深く深く掘り、コンクリートで固めた基礎工事をし、ドイツからわざわざ取り寄せた厚み100ミリの外壁材を用いた建屋は、騒音対策への気遣いと、金属が伸び縮みしない23度という温度下で安定した作業を行うことを目的としている。

先祖からの田畑に社屋を建てたときの北原の地元愛は前述したが、仕事においても地域への感謝を忘れていない。

上空から見た明工精機の社屋

「これは今の私の考えのもとになっているのですが、20年くらい前、諏訪の企業8社ぐらいが集まって、各々の会社を訪ねて改善点を指摘し合うということをやったんです。生産量を上げるためにどう工夫した方がいいだとか、それぞれの企業の長所短所について意見を交わした経験は、非常に勉強になっています」

そして自身が経営者として独り立ちしたからこそ、富士見町の精密業全体が発展していくことも願っている。

「このSEIMITSU FUJIMIの活動もそうですけど、いろんな業種の人、会社が富士見に集まってくれたらいいなと思うんです。富士見町の精密の可能性が広がっていけばうれしいです。ウチに来た仕事でも、ここ富士見の精密企業さんたちの力を得て、次のステップへ、次の未来へつながるような仕事ができたらと思います」

取材・執筆:今井浩一
構成・編集:澤井理恵(ヤツメディア)
写真:五味貴志
動画:山田智大(やまかめ)

株式会社明工精機

【設立】 2009年
【所在地】富士見町立沢390-1
【連絡先】 TEL.0266-78-8533  FAX.0266-78-8422 

【代表者】代表取締役社長 北原収
【従業員数】23名
【事業内容】各種金型のダイセット、プレート加工ほか
【設備情報】縦型マシニングセンター(CNC JIG BORER)、平面研削盤、三次元座標測定器、マシニングセンター(1052VⅡ)、横型マシニングセンター(MA-600HⅡ)、マシニングセンター(MB-66VB)、マシニングセンター(MA650VB)、マシニングセンター(VM53R)、NCフライス盤、ガンドリル(MHG-1000NC)、横型マシニングセンター(EF-2000H) ほか

【webサイト】https://www.meikou-seiki.co.jp

(記載の内容は全て取材時点の情報です)

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