企業イメージ:有限会社メタル工房

アルミのプロ集団
知・ノウハウがここに集積

有限会社メタル工房

日本のあらゆる産業や私たちの暮らしを支える大切な資材・アルミ。1円硬貨、ビールや清涼飲料水の缶、住居の窓枠など、アルミ製品は私たちの暮らしになくてはならないものだ。一方で、アルミフレームとアクリル板で作られる装置カバーというものがある。消費者に身近な製品とはかけ離れているが、危険性の高い工作用機械から作業者を守る、ホコリやチリから製品を守るなど、製造現場で重要なアルミ製品のひとつだ。ニッチな産業である装置カバー。メタル工房はこの装置カバー製造に参入し、わずか数年で業績をあげ、急速にシェアを伸ばしている。「技術よりノウハウが売り」そう言い切るアルミのプロ集団・メタル工房にせまる。

新規事業への挑戦

メタル工房は、アルミ長尺材の金型から、製造・加工・組み立てまでをワンストップで提供している。主に建材関係の事業(面格子〈めんごうし〉:窓枠をカバーする格子状の製品)を主軸としてきた。しかし、2016年、代表取締役の小林浩一が、「これまでのノウハウを生かし、 “新たな事業”を開発せよ」との命を営業担当の平出に与える。アルミフレーム材の加工・組み立て、図面の作成、材料の手配、製品の情報化など、営業業務全般をこなしてきた平出を筆頭に、メタル工房の新製品・販路開拓への挑戦が始まった。

工場の装置カバーを製造する会社は国内には数社しかない。装置カバーは、危険性の高い工作用機械から作業者を守る、気密性の高い機械をホコリから守るなどの用途に用いられている。現在、売上の9割以上が装置カバー関連事業というメタル工房だが、躍進の秘密は、得意とするアルミフレームの加工技術はもちろん、関連資材の企業、メーカー各社との強固なネットワークにある。

メタル工房は、自社でアルミ資材は保有していない。装置カバーの注文を受けると速やかに、アルミフレーム資材を調達するための企業や自社加工以外の技術を持つ企業の選定、そして、製品をワンストップで形にするネットワーク体制をフル活用して、出荷を目指す。この一連の流れに必要なノウハウがメタル工房に集積しているのだ。

営業担当の平出翔太

ゼロから構築した強力なネットワーク

「社長の小林から新規事業開拓という課題をもらったことで、いろいろ考え始めていました。そんなとき、アルミフレーム材を販売していたメーカーさんが来社され、弊社の加工設備、技術を見て装置カバーの加工の依頼をいただきました。さらに、アルミフレーム材を用いた装置カバーの組み立ての仕事は、同じ町内で装置メーカーの株式会社ベアックさんのお手伝いをさせていただいたことが始まりです。もともとお取引があった企業さんや、富士見町の企業さんとのご縁で装置カバーという新規事業に参入することができたんです。ここ数年で自社の主力製品は大きく変わりました。いまでは、アルミフレーム材を用いた装置カバー、装置の周辺機器、ロボットの安全柵など、さまざまな工場の環境改善に必要な製品・部品をつくっています。

装置カバーに着手する前から、アルミ長尺材の加工や組立のノウハウや知識の量はどこにも負けないと思っていました。お客様自身で装置カバーを組み立てていらっしゃる企業さんもありますが、弊社はアルミの調達、加工、設計、組み立てといった装置カバーに関する一連の作業をコーディネートすることができます。様々な技術を持つ関連企業さんたちの協力のおかげで装置カバーの専門業者になり得たわけです。効率よくコストダウンできることもメタル工房だからこそできる技と自負しています。技術よりノウハウ。つまり、発注とほぼ同時に、図面から必要な材料の選定、効率の良い製作工場、制作工程など、一連の流れを導きます。このノウハウこそが弊社の一番の強みです」

装置カバー組み立ての様子

そう話す平出の口調は穏やかだが、大きな自信が伝わってくる。彼が構築したネットワークは、メタル工房の営業担当として自らの足で地道に開拓したものだ。取引先に足繁く通い、素材調達のために不可欠なアルミフレーム材大手メーカー数社とも信頼関係を築きあげた。アルミに関しての膨大な情報が入った平出の知識量は、メタル工房が飛躍した大きな一歩を担ったといってもいいだろう。

工場内に設置された装置カバー
強度、耐久性のあるカバーは屋外利用にも適している

「打ち合わせでさまざまな工場を回っていますが、可能な限り、他社製品や工場内を見学させてもらいます。それが自分の知識として身になっています。たとえば、樹脂パネルの設備や加工方法を知っておくと、弊社製品に活かせるヒントがありますし、現場作業者の手を動かす範囲、動線など、作業をする人の動きを自分の目で見ておけば、より良い製品に活かせるアイデアが浮かんでくるんです。現場を回ることは、設計に反映できるヒントがたくさん詰まっているんですよ。アルミフレーム材のメーカーさん、樹脂パネルの業者さん、板金屋さん、切削加工屋さんなど、さまざまな方たちの協力があってメタル工房が成り立っている。長野県の諏訪エリア、伊那エリアは全国的に見ても装置を手がける企業さんが集積している地域ですので、いろんなお客様からの紹介でつながりが広がっていったわけです。私どもはすごく恵まれています」と装置カバー事業の立ち上げを振り返る。

独自のネットワーク、フットワークの軽さ。そして、この探究心こそがメタル工房のアドバンテージであり、“技術”となっている。

技術と知識から導き出される多様な提案

メタル工房のもう一つのアドバンテージは、全国でも稀な6メートルという長尺のアルミフレーム材の加工機を保有していることだ。美しくまっすぐな直線の長尺アルミフレームは、数本つなぎあわせて使う場合よりも必然と強度をあげることとなる。数人で作業するライン現場や大きな液晶製品に携わる企業で重宝されている。

長尺縦型マシニングセンタ。6メートルの長尺アルミを加工できる

6メートルのアルミ長尺材加工ができることに加え、メタル工房では、アルミフレームだからこそできる複雑な断面形状も得意としている。アルミニウムの加工方法には圧延、鋳造、ダイカスト、鍛造などがあるが、この複雑な形状は、押出加工を用いる。ドロドロに溶けたアルミを金型に通して、ところてんのように押し出すことで多彩な断面形状を成形していくのだ。

押出加工で作る断面形状の種類は山のようにあり、それぞれに協力企業の技術が詰まっている。押出加工は、理想の断面形状を作ることができるが、金型作成前にビスホール(ネジ穴)の場所を考慮した金型にした方がいいのか、または、金型を作成、アルミを流し入れた押出加工後にビスホールの穴を開ける加工が適しているのか… 。ビスホールは数ミリ単位で調整が必要になるため、これらの判断もまた、長年アルミ加工に携わってきたメタル工房が得意とするところ。最終的な押出製品をイメージし、加工を考慮した押出成形・金型を作ることができるか。そして、理想の断面形状を作成・加工できる企業の選定。これら全てのデータベースもメタル工房に蓄積されているのだ。

アルミを自由に成形できる押出加工を施した製品例

「今の時代、ネット検索で調べられないことはほとんどありません。しかし、アルミ加工において、複雑な形状、深度など、希望する断面形状をインターネットで検索することや、さらにそれが製造できる会社を調べるのは、至難の業です。だからこそ、企業さんを訪問し、私の知識としてたくさん蓄積していくしかない。どのアルミフレームメーカーさんでどういうものを製造しているかを頭の中に叩き込むようにしています。押出加工についての知識は、どこよりも、幅広く豊富ではないかと思っています」

無限にあるアルミの断面形状、加工技術、資材調達、低コストの方法… 。メタル工房が蓄積してきたアルミ製品に関する知識は、次世代のアルミ製品を生み出す起爆剤となるかもしれない。

取引先や事業規模の拡大が次なる目標

「私どものお客様は、自動車、半導体、液晶などの部品を製造する装置を作っている装置メーカーさんになります。装置カバーの詳細設計から弊社で行う場合もありますし、お客様からいただいたものを弊社で修正することもあります。設計図をもとに、問題がある場合は、『ここは弊社のこの技術でクリアできます』といった具体的な提案をしつつ、弊社の設計担当者が図面をつくり上げます。3DCADと2DCADで設計を行い、そこから材料・部品を手配、製作工場に集めて加工、弊社で組み立てるわけです。組み立ての指示については紙の図面とタブレットで3Dの図面を現場で見られるようにし、最終段階の組み立て作業をスムーズに行って出荷するというのが一連の流れになります」

メタル工房の従業員は6名と、まさに少数精鋭の“工房”だ。「従業員すべてがコーディネーターのような一連の業務をできることが一番効率的なこと。だれでも動ける状況が望ましい」という想いを掲げ、現在は事業の立ち上げから平出自身が培ったさまざまなノウハウを同僚に共有している。それがなされれば、自身もさらなる営業拡大に動けるからだ。

「ここまでいろいろなお客様とお仕事をさせていただいていますので、このまま順調に取引先の範囲、自分たちができることの規模を広げて、業界内で“アルミフレーム、装置カバーのことならメタル工房に任せておけば安心”という評価をいただきたいと思っています。もっと多くの企業さんから任せてもらえる会社を目指して、従業員みんなで一緒に頑張っていきます」

コロナ禍で味わったBtoCの喜び

現在のコロナ禍のなか、取引先との打ち合わせはオンライン上になってしまう。確かな観察眼を生かしたプラスαの営業を展開してきた平出は、物足りなさを感じている。コロナ収束を祈りつつも、一方でメタル工房としては代表取締役である小林の発案で「飛沫感染対策パーティション」という新たな仕事も生まれ、気づきがあったと言う。

富士見駅前のカフェ「KIZASHI-Station」に設置されている飛沫感染対策パーティション

飛沫感染対策パーティションは、小林が「このコロナ禍、我が社の技術で世の中の役に立てることはないか」という思いから生まれた製品だ。試作を重ね、試作品ができるとインターネットや新聞で告知。町内のカフェ「KIZASHI-Station」で使用された。

「KIZASHI-Stationさんでパーティションを見たお客様が注文をくださり、それを見たお客様がまた注文をくださるという連鎖もあり、今では町内の保育園、コンビニなどからも注文をいただいています。評判も上々です。これが初めてのBtoCの仕事でした。一般のお客様との仕事はこれまでと違った考え方が必要であることもわかりました。価格ひとつとってもBtoCの場合は税込で考えるという違いがあります。このパーティションが刺激となり、さらに一般のお客様に使っていただけるような製品ができたらという思いも強くなったんです。実際に、富士見町工業部会の若手の仲間とともに、ヘルスケア分野の課題をそれぞれの企業の技術を集結させて解決できないかというお話をいただいています。本業の装置カバーは見たことない方がほとんどでしょうから、広く一般の方々にも知っていただける製品がつくれたらとても楽しいことだと思っています」

仕事の最中に眺めて癒されているという、何にも遮られることなく全体が見渡せる八ヶ岳の山並みを前に、新たな目標を口にした。

富士見町内の取引先の窓から見える八ヶ岳。平出お気に入りの風景だ
代表取締役 小林浩一(右)とともに

取材・執筆:今井浩一
構成・編集:澤井理恵(ヤツメディア)
写真:ミズカイケイコ
動画:赤錆健二(Omusubi factory)

有限会社メタル工房

【設立】1962年

【所在地】〒399-0214 長野県諏訪郡富士見町落合字10387番地8

【連絡先】TEL: 0266-62-7754 
【代表者】代表取締役 小林浩一
【従業員数】6名

【事業内容】アルミ長尺材の加工、アルミフレーム材の加工・組み立て

【主力製品】装置カバー、ロボット安全柵などのアルミフレーム製品

【設備情報】長尺縦型マシニングセンタ×2、クロスカット切断機×3

【webサイト】https://www.metal-kobo.co.jp

(記載の内容は全て取材時点の情報です)

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