企業イメージ:株式会社トップマクト

独自の管理システムで
技術力の、その先へ

株式会社トップマクト

柔らかく、加工しやすく、水に触れても錆びない。そんな特性をもつ銅合金、特に真鍮の活用の場は工業分野から装飾品まで多岐にわたり、暮らしの隅々に息づいている。一方、「ものづくり」の視点から見れば、真鍮の特性は参入障壁の低さにもつながり、競合との差別化がシビアに求められる業界だ。そんななか、1990年代よりバルブ部品や住宅の水回り部品における真鍮の旋盤加工に特化し、経験と技術力を育んできた株式会社トップマクト。2017年に就任した3代目社長・小林慶彦は、この強みに新たな価値を加え、次の一歩を踏み出そうとしていた。

「全数外観検査」は、トップマクトのコア技術

標高約1000メートル、八ヶ岳の澄んだ空気を感じる農地と森に囲まれるようにして建つ、株式会社トップマクト。「ステム」「ホースニップル」などのバルブ部品加工を中心に、NC旋盤を用いた真鍮の切削を1990年代から行う金属加工メーカーだ。

創業は、1960年代。もとはエンジニアとして大手工作機械メーカーに勤務していた現代表小林の祖父・小林修が、鉄やアルミなど幅広い金属を扱う加工会社(旧社名/共栄製作所)として設立したのが起こりだという。

「祖父は機械の図面を自ら引いて加工し、製造までできるエンジニア気質の人物だったようです。真鍮が専門になったのは、父の代から。伸銅品メーカーの株式会社キッツメタルワークスなどと取り引きするようになって、さまざまなニーズに応えながら経験を重ねてきました」

代表取締役・小林慶彦

そう話すのは、3代目にあたる代表取締役・小林慶彦。2017年、弱冠33歳にして現職に就任した小林社長は、自社の強みを「技術力と、それを支える検査体制の厚さ」だと語る。

「弊社が主に加工している真鍮パーツの“精密度”は、加工業全体のレベルでいうと、ミドルクラスのものだと思うんです。超高精度のものを小ロットで納めるようなタイプの事業ではないし、単純に大量生産できる部品でもない。その間に位置する、水漏れを決して起こさない精度と、広く使っていただけるための生産性の両立を常に求められ、これに応え続けてきたんです」

この「両立」、とくに精度品質の安定化を叶えるために、同社で徹底しているのが「全数外観検査の実施」。通常、数万個というロット数のなかではロットごとのランダム検査にとどまるところが多いが、同社は10名の従業員のうち最大5名を検査員として配置し、徹底した品質管理を行っている。

「検査員といっても、採用してすぐに的確な検査ができるものではありません。適した資質もあり、現実には誰でも検査員になれる、というものではない難しさもある。もちろん、どんなに向いている人でも育成には数ヶ月またはそれ以上の時間を要します。そういった意味で、検査は私たちのコア技術の一つだと考え、大切にしています。『1社と信頼関係が崩れれば、すべて仕事を失ってしまう』という、100%下請けならではの緊張感から生まれた強みだと思います」

検査員の育成もまた、熟練の社員による教育体制が確立してきている、と小林社長。「ガイドラインにのっとってまずはやってみる。これを熟練が評価し、フィードバックすることを繰り返して、独り立ちまでサポートしています」

従業員による製品検査のようす。検査数は一人当たり1日5000個にのぼる

「この加工ができるのは、全国でここだけ」
 困難な要望も、経験+アイデアで突破

 技術力といえば、こんなこともあった。小林社長の就任直後に持ち込まれた、長さ400ミリ(外径25mm)を超える真鍮棒のパーツ加工だ。「これを切削加工できるのは、おそらく全国でもうちだけじゃないかと思いますよ」。物腰柔らかな小林社長の目の奥が、ふいに強く光った。

 「ご存知の方はすぐわかると思いますが、一般的な加工機であるシチズンの自動盤では、Z軸のストロークが340ぐらいまでしか加工できない。このサイズは、機械そのものの可動域を超えているんです。細切れで作ってネジでつなぐのなら可能かもしれませんが、長物一本のまま加工し、棒の両端の精度を合わせていくのは、なかなかできないんです。

なんでそこまで言えるかって、実はうちも、外部委託したいなと思ったから(笑)。町内の企業を頼って、大型の加工機械を持っている関係会社10社に聞いてみてもらったんですが、全社に『これは無理』って断られたんですよ」

それでも小林社長には、最初から可能性の萌芽が見えていたという。たしかに、通常の使い方ではできないかもしれないけれど、こんなふうに工夫すれば、と。

 「加工機の動きや、刃物の走り方。うちの職人が加工の方法だけでなく、機械の構造まで知り尽くしていたからこそ、僕の『できるかもしれない』の予感を現実のものにし、顧客の要望に応えることができた。代表取締役就任後の、忘れられないできごとの一つです」

 実は、小林社長がこの若さで現職に就任したのは、父・小林清の急逝がきっかけだった。これを機に勤続20年ほどの熟練工が退職することとなり、トップマクトは一転、窮地に立たされたこともあったという。

 「役員、残ってくれた従業員たち、地域の同業の仲間にも、本当に助けてもらいました。そのとき手を貸してくれたひとの顔は忘れられないし、だからこそ社員を大切にする会社でありたい。加えて、自社の発展だけでなく地域のなかでどう貢献できるか、ということも、考えるようになりました」

(株)キッツメタルワークス製の黄銅(真鍮)棒
トップマクトの本社工場の様子
現在、トップマクト社員の平均年齢は30代。
「これからは、コロナ禍をきっかけに移住を考えている首都圏のエンジニアなども受け入れられたら」

生産管理システムで、無駄なく迅速な判断を可能に

技術力と、検査体制。トップマクトが培ってきたこの2つの強みに、小林社長はいま、さらなる「武器」を装備し、さらなる事業拡大に向けた準備を進めている。それは、独自に開発した管理システムと、幅広い真鍮加工に裾野を広げる営業力だ。

とくに大きな分岐点となったのは、約10年前、会社の業態に合わせて小林が自らプログラミングした在庫と生産の管理システムだった。

もともと住宅の軒先から起業したという成り立ちの多いものづくり企業は、事業の拡張とともに近隣に別棟の工場や倉庫を建てて行き来しているところも多い。トップマクトももちろんその一つ。町内南原山地区を拠点に第三工場まで構え、物理的距離があるなかでも精度高く在庫状況を把握することは、事業を拡大していくうえでも必要不可欠な事業改革だったのだ。

システム導入により在庫のロスが減り、原料発注の的確なタイミングが導き出され、新規案件にも迅速な判断が可能となったという。

管理システムを確認。各地の倉庫の在庫状況もタブレットで一目瞭然
作業効率アップのため6軸多関節ロボットも導入

 「もちろん、できあいの管理システムも販売されていますが、製造業は100社あれば100通りの物の流れがあり管理の方法があり、オーダーメイドに勝るものはありません。そしてなにより、自分でシステムをつくることで事業の全体を見渡す学びのきっかけになる。そう考えて、一からシステムを自作しました。

事業規模や受注する品目が拡大すればするほど、現場の“感覚”だけでは在庫管理や発注のタイミングを逃しがちになってしまう。生産に安心して注力してもらうためにも、テクノロジーにアシストを受けて数値的に管理をしていくことは必須条件だったと、導入後改めて実感しました」

この体制があってこそ、社内の「余力」を見極め、次なる顧客獲得のタイミングを図ることができる。人口減少が加速する時代のなか、小林社長は社内の持てる力を活かし、装飾品、ジュエリー、楽器など、BtoCへも積極的に事業を展開していくべく、事例を積み重ねている。

 「これからはお客様の要望に対して、トップマクト独自のアイデアや技術を提案していきたいと思っています。例えば、お客様が設計した部品に対して、『こうすればよりコストダウンにつながります』といったイニシャルコストの削減方法などのご提案がそうです。人口減少とともに、なにごとも絶対的な流通数は減っていくはず。けれど熱・電気伝導性に優れ、殺菌効果がある、そして見た目も美しい真鍮の可能性は、もっと幅広い場面で注目されていい素材なはずです。電気自動車のパーツ、5G通信、装飾品、アウトドアグッズ、楽器など、活躍できる分野は無限大だと感じています。まだまだ真鍮に未来はある。提案力で顧客の裾野を広げ、これからも選ばれ続ける企業でありたいです」

取材・執筆:玉木美企子
構成・編集:澤井理恵(ヤツメディア)
写真:五味貴志
動画:山田智大(やまかめ)

株式会社トップマクト

【設立】1961年(旧共栄製作所)、1988年より現社名(株)トップマクト

【所在地】〒399-0214 長野県諏訪郡富士見町落合字南原山9984-464

【連絡先】TEL:0266-61-1199(代表) FAX:0266-61-1177

【代表者】代表取締役 小林慶彦

【従業員数】10名

【事業内容】伸銅品切削加工

(記載の内容は全て取材時点の情報です)

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