企業イメージ:有限会社トーワ

「信頼」を支える
検査専門会社

有限会社トーワ

ものづくりを行ううえで、欠かせない工程のひとつである製品検査。
持ち前の技術を生かした自社製品の開発や、顧客へのVA/VE提案が製造業における「攻め」ならば、検査の徹底は信頼を勝ち取り、受注をつなぐための重要な「防御」の策といえるだろう。
そんな、門番というべき役割を担い続けてきたのが「有限会社トーワ」。諏訪圏域でも唯一、プリント配線基盤などの「検査」を専らとする同社は2004年、業界に先んじて品質管理の国際規格・ISO9001を取得。外国人も従業員に迎え入れながら、諏訪地方のものづくりのブランドを縁の下で支えてきた。

「流れ」と「好奇心」を味方につけて。
検査会社という、唯一無二の存在に

回る旋盤のモーター音に高い金属音、ザラザラと流れ落ちる部品の音。SEIMITSUの町・富士見の工場にはいつも、にぎやかな音があふれている。しかしこの場所には一転、静寂の世界が広がっていた。従業員たちは確認機のモニターを見る人や顕微鏡を覗く人、測定器具を操作する人など、いずれも椅子に腰掛けてそれぞれの作業に集中している様子だ。
それもそのはず、ここで行われているのは部品製造ではなく、できた製品が仕様に合っているかをチェックする検査作業だ。有限会社トーワは地域唯一、検査の専門会社として、プリント配線基盤や精密部品の検査を行っている。

創業は1972年。しかし当初は検査事業ではなく、自動機を使ったカメラの鏡枠製造からスタートしたのだと、社長の和田佳巳は懐かしそうに当時を振り返る。

「1972年、地元の先輩の紹介で夫に出会いました。すでに自動機の仕事をはじめていた彼について、先輩から『こいつの仕事を助けてやらないか』と言われたのが、結婚のきっかけ。『勤め人で働くより、ちょっと夢があるかな』って。もちろん、実際はそう甘くない自営業の出発でしたけれどね」

初代社長を務めたのは夫の吉人。鏡枠製造が下火になった後はプリント基盤や光ケーブルなどの組み立てを主な業務としていた時代もあった。ものづくりの趨勢に合わせ、求められるままに、「できることはなんでもやってみた」と和田。そんななか、新たな仕事の一つとして「基盤検査」を引き受けたことが、後の方向性を決める同社の大きな転機となっていったのだった。

代表取締役・和田佳巳

ISO取得や外国人労働者の受け入れも
地域に先んじて実践

「それまで、検査の経験はありませんでした。でも、組み立ては年を追うごとに採算が合わなくなって困っていたし、なにより私は“新しいもの好き”だから。研修に行きやり始めたら、これが意外と面白かったんです」

そんな和田の前向きさとフットワークの軽さはいつでも、移ろいやすいものづくりのトレンドの波を乗りこなす、力強い原動力だ。検査業務に好調の兆しが見え始めると、すぐに体制強化を実行。設備の拡充とともに、2004年秋には全国でもいち早く、品質マネジメントに関する国際規格「ISO9001」の認証を取得し、顧客の信頼を勝ち取ってきた。

「ISO9001は、スポーツに例えればルールブックのようなもの。事業者自身が正しく業務を遂行するためのルールを設定し、それを遵守できているか認証機関にチェックしていただきます。お金も手間もかかりますが、私たちの仕事への姿勢が目に見えて表れるならと、今も毎年更新しています」

加えて、外国人の労働力への着目も、地域に先んじたものだった。当時盛んだった、国際結婚で富士見に暮らすこととなった外国人女性たちの雇い入れを契機に、最盛期は技能実習生を含む35名のスタッフが検査室にひしめくにぎわいに。電気製品の生産拡大とともに事業も広がりをみせ、その様子は地元誌でも報じられるほどだった。

2009年ごろの検査室のようす

「今でこそ、大きなディスプレイを使った検査機での検査が中心になり、必要な人手も減りましたが、2000年代のころは一つひとつ顕微鏡を覗き込んで何種類もの不良をチェックするという、とても労力を使う仕事が多かったんです。

頼りになるのは目が良くて、根気強くがんばれる人。当時から富士見町にも増え始めた、日本人と結婚した若い外国人の女性たちの力が大きな力になりました。日本の女性たちの細やかさと、外国人女性たちのガッツ、それぞれを生かしてみんなで一丸となってがんばったものです」

「人は宝」。たしかな検査精度のため、言語習得をていねいにサポート

創業からもうすぐ50年、検査業務開始からはもうすぐ25年。基盤のサイズも検査内容も大きく多様化し、使う道具も顕微鏡から検査認識機械へと主役が移り、課せられる数や求められる精度は年々上がってきた。「けれどどんな仕事も、やっぱり大切なのは関わる人。今も昔も“人が宝”なんです」と和田。

「人材不足は常に課題。検査という性質上、集中力や視力等で適した人材がなかなか得られず大変です。研修制度の導入により、海外からの研修生も入るようになったものの、やはり適正もあるし、慣れも必要。どこの国の人でも、1年程は主力要員にはなり得ないんです。けれど私たちの仕事は、お客様の製品の価値を保証する日々神経を使う仕事。だからこそ、人材育成は手を抜くことができない事業のかなめなんです」

和田がとくに重視しているのが、外国人労働者の言語への理解。「複雑な業務をこなすにはまず、コミュニケーション力から」と、技能実習生につけさせる日記を和田が毎日添削するという徹底ぶりだ。

ものの置き方一つ、掃除の方法ひとつとっても、国によって習慣も違えばやり方も違う。それでも諦めず伝えることで、努力は必ず仕事の成果として現れてくる。その実感とともにトーワはこれからも、ものづくりの信頼を支える品質の門番であり続けていく。

外観

取材・執筆:玉木美企子
構成・編集:栗原大介(ヤツメディア)
写真・動画:山田智大(やまかめ)

有限会社トーワ

【設立】1972年(東和製作所として)
【所在地】〒399-0214 長野県諏訪郡富士見町落合瀬沢新田11041
【連絡先】TEL:0266-62-5860 FAX:0266-61-1313
【代表者】代表取締役 和田佳巳
【従業員数】13名
【事業内容】プリント配線基盤確認機械検査、セラミック基盤顕微鏡検査、部品検査、不随作業
【設備】検査認識機械7台、顕微鏡25台、アーム付き顕微鏡2台、拡大鏡5台、投影機5台、静電気防止帯、パソコン3台、プリンター1台、プロジェクター1台、クリーンルーム(簡易) 暗室 ※ISO9001取得(登録機関インターテック サーティフィケーション)

(記載の内容は全て取材時点の情報です)

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